ポケ3の偏光フィルム交換 ポケ3の偏光フィルム交換


諦めないで下さい!
あなたのポケ3は甦るかも知れません。



としきさんの所でポケ3ユーザ氏から提起された液晶のビネガー現象に就いて偏光フィルム交換のアドバイスをしてをきながら、東京と違って在庫があるかも分からない地方の東急ハンズまで通販送料より高い交通費を掛けてまで行くのが面倒な事、豫備機があって差し當たり困らない事、私自身のメイン環境がBTRONでありゼロスピンドル化したチャンドラクラビウス(ThinkPad 235)を新品入手可能な互換バッテリで運用できる事から自分のポケ3の修理が放置プレイになってました。だってフルスペックのB-right/Vが使へるんだもん(^^;

その後、豫備機の方もビネガーにやられ、いつまでも放置プレイにしとくわけにも行かないって事で漸く重い腰を上げて作業しました。HP200LXに關しては多くの情報があるのですがポケ3に關しては見當たりません。と言っても液晶パネルの分解以外はLXと同じ事をやるわけですが(^^;

かうした修理のノウハウは多くの先人達の努力と試行錯誤(人柱とも言ふ)の上に蓄積されて來たものです。LXで定番の偏光フィルムがポケ3でも使用可能な事が判明したのもポケ3ユーザ氏の人柱報告があったからです。今囘の作業手順を公開するに當たり先人達の努力と貢献に謝意を表します。

ビネガーシンドロームにやられたポケ3の液晶。


私の個體では全體が青黒く變色する所までは進行してませんでした。寧ろ、畫面の變色は見られず表面のザラつきや部分的に水膨れが出來た状態でした。

フィルムを剥がすとこんな感じになります。


この状態を見ると青黒く變色する症状はフィルムの中で發生するのだと考へられます。


偏光フィルムの無くなった箇所では畫面表示が見えなくなります。この劣化したフィルムを完全に剥がして交換します。


剥がした偏光フィルム


フィルムの裏面擴大。層間の接着劑が綺麗に剥離しない爲デコボコになります。


勞力の殆どは剥離作業に費やされます。それ以外はオマケ程度と言ってもいい位です。この邊はフィルムの劣化具合によって簡單に剥がれるかガンコに剥がれないかが違って來ると思ひます。

剥離作業に使ったのはこちら


高森コーキ ガムテープフック跡はがし JAN:4956497060378
ロックタイト 強力接着劑落とし JAN:4976742257322
アサヒペン シールはがしC4 60ML JAN:4970925602145

これらは全部必要になるとは限りません。運が良ければどれか一つだけでいいかも知れませんが私の個體では全部必要でした。

さて、液晶パネルの分解作業です。外すのは本體裏のヒンジ側ビス二本。ここを外すとファンクションキー一覧のパネル(電源ボタン側液晶固定兼用)が外れます。パネルはキーボード側で兩端とPF2の下、PF5とPF6の間、PF8の「8の文字の下PF9寄り」の所にツメがあります。キーボードと反對側にもツメがあるので組み直す時は兩方をきっちり嵌めないといけません。

※注意!
PF2下のツメは單三電池を抜かないと上手く外れません。と言ふ事はバックアップ電池が弱ってゐると單三電池を抜いた時點でシステムが飛ぶのでバックアップ電池は新品に交換してから作業に入る事をお勸めします。私はFMR-CARDを持ってるので復舊用のシステムカードを簡單に作れますがそんな人は殆どゐないでせう。Windows用のシステムカード作成プログラムを使ふ方法もありますがPCMCIAスロットを持つPC本體を現役稼働状態で持ってなければ話になりません。システムを飛ばして了ったのにシステムカードを持ってない場合は[機能]+[左シフト]+[改行]キーを押しながら電源ボタンで起動して下さい。バージョン01-001(一番古いシステム)になりますが大抵はこれで復舊できる筈です。

パネルを外すと電源ボタン側はフレキケーブルの接續端子、反對側はヒンジをネジで固定する金具になってます。フレキ側はパネルで押さへてあるだけ。まるでゼロハンのフロントサス(^^;

液晶パネルを本體から分離したら次は液晶ベゼルを外します。液晶パネルの下側にある細長いカバー。

これは穴二カ所に引っ掛けてあるだけなのでカッターの刃の樣な薄い物を差し込んでカバー中央を撓ませると外せます。カバーを外すとネジが三本あるのでそれを外します。後は下→兩側→上の順でツメを外して行けば分解出來ます。分解時に外すネジは合計で六本です。他の部分(本體裏カバーやキーボード)を外す必要はありません。


偏光フィルムは可能であれば最初に手で剥がした方がいいと思ひます。私の個體では一應剥がれたのですがガラス面から何層かガッチリ生きてて剥がれませんでした。その剥がれなかった部分に剥離劑を塗るとこんな感じに溶かされて行きます。


溶けたフィルムを除去するとこんな感じに層が殘りました。


剥離劑が複數必要だった理由がこれです。ポケ3の場合、フィルムの層によって適合する剥離劑が異なりました。實際に塗ってみて白濁すれば溶けてますが白濁しない場合は剥離劑を變へて作業しました。

はっきり言って地道な作業です。ひたすら忍耐が必要です。ここで焦ると液晶のガラスを割る等取り返しの付かない事態になります。なので氣長にやるつもりで地道に作業を續けて下さい。ポケ3のフィルムの材質がLXと異なるのか私の個體が青黒くなるまで劣化してなかったせいなのかは判りませんが、人によってはこの剥離作業の途中で挫折するのでは?と思ふくらいに地道な作業でした。一囘で全て終はらせやうとせず毎日少しづつやるくらいの心構えで始めた方がいいと思ひます。


冗談拔きでこんな心境でした。二號機の方は一號機よりもガラス面と接觸する層の接着劑が多く殘り剥離劑では取れませんでした。なので超鏡面コンパウンドで研磨すると言ふ荒業を行使する事に(^^;

※コンパウンドの使用は自信の無い方にはお勸めしません。研磨劑ですから液晶表面の素材がガラスであっても絶對に傷が付かないとは言ひ切れないからです。傷で曇ったCDの盤面を鏡面仕上げに復元できる自信が無ければしない方が無難です。自信は無いけどだうしても剥離しない場合は失敗したCD-R等で練習してからにして下さい。

地道な作業の果てに最後に殘った斑状の接着劑はアサヒペンと水の激落ちくん不織布で磨きました。尚、水の激落ちくんを使ったのは單に家にあったからでありアサヒペンとの組み合はせで高い效果を發揮するからではありません(笑)。

最終的にフィルムを剥がし終はった状態がこちら。とにかく一點の曇りも無くなるまで磨きます。If any one of you is without sin, let him be the first to throw a stone at her.(あなた方の中で罪の無い者が先づこの女に石を投げなさい。ヨハネの福音書八章七節)と言はれて「では私から」と言へる清い心くらい一點の曇りも無くなるまで磨きます(笑)。表示された文字を讀む爲の畫面ですから作業時に「これくらいでいいや」で濟ませて了ふと實際の運用を始めた時にガッカリします。


ここまで來れば後はフィルムを着けるだけです。フィルムはLXで實績のあるこちら。

ミッドタウン BSP-250 JAN:2401017181870
接着劑なしの方です。東急ハンズで入手可能です。

ポケ3でも使用可能だとの情報を提供して下さったポケ3ユーザ氏に感謝します。

電源を入れ、フィルムの角度を合はせます。


私の好みではこんな角度でした。250mm角のフィルム一枚で二臺分取れました。


液晶とフィルムの固定はマスキングテープを使用しました。糊殘りしにくいアクリル系です。間違ってゴム系のを使ふと糊が時間の經過と共に母材に移ってベタベタになるので氣をつけませう(^^;

アクリル系が全く糊殘りしないとは言ひ切れませんがゴム系よりはしにくい性質です。

復活したポケ3


LXで言はれる樣にやや黄ばんだ感じがします。視認性拔群のポケ3から初代DOSモバ(青モバ)になった位の差があります。更に光澤フィルムなので照明などの映り込みが發生します。しかしポケ3の復活と引き換へなら妥協すべき所でせう。現行モデルに取って代はる機種は存在しないですから。接着劑なしのフィルムを使ってるのでもっといいフィルムが見つかれば簡單に交換できます。

今囘、二臺續けて作業をしましたが一臺はヒンジカバーのパネル及びヒンジ固定金具用のビス穴にヒビが入って穴が廣がり固定が弱くなってました。プラスチックの筺體に直接ネジ山を切ってあるポケ3の構造上ここが破損する可能性は高いのですが、ヒンジカバーがきちんと閉まらなかったり液晶がグラつく原因になります。

ここを補強する爲にヒビの入った外周とネジ山表面に二液エポキシ性接着劑を塗布しました。エポキシが完全硬化したら元のネジで丁寧にネジ山を切り直して行きます。硬化したエポキシは非常に硬いのでネジ穴を埋めて了はない樣に注意して下さい。さもないと2mmくらいの電動ドリルで穴を開け直すハメになります(笑)。少し硬化したからとそのまま組み直してネジを締めるなんてのは以ての外です。ネジと筺體が接着されて外れなくなる可能性があります。必ず完全硬化させて下さい。尚、エポキシは體質によってはアレルギーを起こすのでアレルギー持ちの方はご注意を。

今囘は手元にあったのでエポキシ系を使ひましたがネジ穴の柱が割れて了ってて再接着をする場合は變成シリコン系の方がいいと思ひます。異種素材同士の接着に優れる=接着できる素材の範圍が廣いですしエポキシと異なり硬化後も彈性があるので現時點で最高の接着劑(某大手メーカーの内部研修資料)らしいですから。


前ニ戻ル

應援バナー(^^;