Fake or Genuine?


私の家にはテレビが無い（笑）ので普段はテレビのニュースを見る事は無いのですが、たまたま姉の所へ行って家族で食事をしてる時にアメリカのトランプ大統領が日米安保條約の破棄を考へてゐるらしいとの報道を見ました。このニュースの發信元はbloombergと言ふ所らしいのですが、元の記事に當たってみた所記事の題名は以下の樣に書かれてました。

Trump Muses Privately About Ending Postwar Japan Defense Pact

テレビでは何故かこの意味をきちんと理解してなかった樣なのですが'muse'ですから「ちょっと思ってみた」程度の意味です。これが'consider'や'contemplate'となってたら事は重大なわけですが…

それはともかくトランプのこの發言（と言ふのは正確ではないかも知れませんが）は日本の憲法を變へる絶好の機會だと言へます。

Trump regards the accord as too one-sided because it promises U.S. aid if Japan is ever attacked, but doesn't oblige Japan's military to come to America's defense, the people said.

トランプ大統領は日米安保を日本にだけ都合の良い片務的なものだと認識してゐる樣です。まぁ確かにその通りなんですけどね。

テレビでは日米安保の片務性に就いてとある有名な有識者が完全な片務ではなく雙務的なものである趣旨の發言をしてました。曰く、日本國内にある「米軍基地」が攻撃を受けたら日本はそれを守る爲に行動するのだから全くの片務とは言へない、と。


こんな誤魔化しを言ふ人がゐるから困るんですよねぇ。その米軍基地が日本國内にあると言ふ事はその土地は日本の領土であるとの前提を形成します。自國の領土を侵犯されたならその侵犯した勢力を排除するのは當然でせう。主權國家なら。公海上にある米軍部隊とまでは言ひませんが、最低でもアメリカの領土内にある米軍基地に對してもそれを守る行動に出て初めて雙務的と言へるのではないですか？

日米安保が片務的である背景には當然ですが第二次世界大戰後のアメリカによる日本の占領政策があります。フィリピン用の憲法を日本向けに修正し日本政府に對してこれを憲法とせよ、と強要した事は今では周知の事實です。當然ながらイコール憲法問題とも言ふべき第九條も含まれてます。

日本が二度とアメリカに逆らはない樣に軍備を禁止したのは他ならぬアメリカなんですから朝鮮戰爭をきっかけに共産主義國との對立→冷戰と言ふ構圖の中でまともな戰爭遂行能力を持てない日本をアメリカが守るのは當然でせう。朝鮮戰爭を自ら戰って、自分達が叩き潰した日本がそれまでやってた事の肩代わりをやってゐる事に氣付いたものの、日本が再度軍事大國になってアメリカに牙を剥いても困るわけですから。

トランプ大統領がここまで言ったとされるのならもっと言って貰へばいいんです。

「アメリカが日本を弱體化する爲に作った憲法をいつまで後生大事にしてるんだ」

とか

「自分の國を統治するルールを自分達で作るのが民主主義だ。他國が作ったものをいつまでも使ってるから日本は「本物」の民主主義國になれないんだ」

とか

普通なら相當に無禮な發言であり國家間の紛爭に發展してもおかしくない所ですが、何せあのトランプですからねぇ（笑）。さもありなん、と思ふ人は多くても眞劍に日米戰爭への發展まで考へる人は先づゐないでせう（笑）。


アメリカ大統領がここまで言へば日本國憲法の正統性は根底から崩れます。何せ作ったアメリカ自身が言ってるわけですから。ズバリ「日本を弱體化するため」の手段だったとその本質を言って貰ふ爲に根廻しをするのが日本の總理大臣の責務でせう。憲法改正が悲願ださうですから。


そもそも憲法を無效にする事など簡單にできます。日本の總理大臣が公式に「日本國憲法はもはや存在しない」と一言宣言するだけです。國家の然るべき責任者の發言はそのまま國家の意思と見做されるのが國際的な慣習ですから。從って首相や大統領が宣戰布告をするだけで相手國との戰爭に入りますし、ヒトラーがベルサイユ條約を一方的に破棄した樣に法的效力を持つ取り決めが無效化されます。

日本の總理大臣が日本國憲法の無效を公的に宣言すればその瞬間に日本國憲法は消滅します。法的に効力を持たなくなります。國内ではグダグダと詭辯を弄する「有識者」が浮塵子の如く湧いて來るでせうがそんなものは國際的には通用しません。日本はもはや「平和憲法」を持たない國として今の内に叩き潰せと一方的に戰爭を仕掛けて來られる事も想定しなければなりません。さうした事態に對處する爲に一刻も早く新しい憲法を制定する必要に迫られるわけです。憲法改正が悲願なんだから試案くらいとっくに作ってますよね？そのタイミングで出せばいいでせう。

憲法の無效を宣言せよとはかの西村愼悟氏も言ってます。この人は法律の專門家ですから當然總理大臣の一言で無效になる事を認識した上で發言してるわけです。

では、無效になった憲法に代はって提出された新しい憲法に法的な正統性はあるのか？西村愼悟氏は直接言及はしてませんが、こんなのは憲法學の初歩でもやった人間なら解る事です。一般教養向けでなく法學部の教科書として使はれる憲法學の教科書ならこの問題は必ず書かれてます。その理論が正しいのか、通説として受け入れられてゐるのかは何故か曖昧になってますが宮澤俊義による八月革命説と言ふものは必ず書かれてます。

この問題の爭點は欽定憲法であった大日本帝國憲法がその規定に從った手續きによらず國民主權を謳ふ日本國憲法へと代はった事の法的正統性を如何に根據付けるかと言ふものです。八月革命説は「革命」とある通り一種の革命が起きた事によって新しい國家に生まれ變はったとする理論です。

ムチャクチャと言へば確かにムチャクチャです。が、こんな詭辯によって日本國憲法の正統性が認められるなら一言で日本國憲法を無效化し新しい憲法を正統なものとする事だってやっていいわけです。グダグタ言って來る國内の「有識者」に對する反論はこれで充分です。若し新しい憲法を認めないと言ふなら同じ理論によって貴方がたは日本國憲法を認めてはならない、と。そして、新しい憲法を認めず日本國憲法にも正統性が無いとなった場合、理論的には舊法（大日本帝國憲法）が復活するのが當然の論理的歸結と言へるでせう。何れにしても日本國憲法は存在する餘地がありません。それでは不都合だと言ふのなら、やはり新しい憲法を制定しなければなりません。一刻も早く。

安倍晋三總理大臣が本氣で憲法改正をする氣があるのならこのトランプ大統領の發言は絶好のチャンスです。果たしてこの好機を逃さずに悲願の憲法改正をする動きに出るでせうか？

本物の愛國者であるのかが問はれる所、國民から見れば本物の愛國者であるかを見分けるテストだと言へるでせう。ま、できないししないと思ひますけどね（笑笑笑）。

それ以前にそんな發想すら持てないでせう。何せ舊皇族方の復活に對して「國民のコンセンサスが必要」などと戯けた事を言ふ人ですから。

天皇陛下が天皇陛下である正統性は天照大神に繋がるその血統以外の何ものでもありません。同じ樣に皇族方が皇族である理由も天照大神に繋がる血筋の家系である事に他なりません。それを「國民のコンセンサス」によって皇族である事が認められるなどと言ふのは選擧によって皇族になれると言ってるのと同じです。舊皇族方が皇族としての地位を失ったのは日本を占領したアメリカの意思以外の何ものでもありません。フランス革命の如く日本國民が叛亂を起こして追放したんですか？

こんな單純な理論すら理解できないアタマの持ち主が總理大臣として勤まるわけですから日本って平和だなぁ……と苦笑せざるを得ません。苦笑できる内は未だマシなわけで、日本を取り巻く國際情勢がそれを許さなくなった時にはだうするんですかね？

こんな事書いてると狂信的な安倍シンジャーが支離滅裂な罵詈雜言で攻撃して來さうな氣がしますが、まぁ理論的な思考廻路を持たない人間は相手にする價値がありません。時間の無駄です。テレビでニュースを見る暇があったら芦部某の憲法學の本でも讀んで日本の憲法學が如何に腐ってるか勉強して下さい。


(26/06/2679)

comments from social media users

岡リ 2019年6月26日 19:59 米国のダイトーリョーも 我が国のソーリーも ゆくゆく先々の影響まで深く考えているようには思えないッス(^◇^;)	コメントへの返答 2019年6月26日 21:06 アメリカ版万里の長城もそうですがアメリカは自国の利益を考えてるんでまともです。日本は権力者が自分の利益を考えてるだけですからね〜。そんな奴らに投票する国民がいるのが問題なんですけど「信者」ってのは手に負えませんからね〜。
セラフィム2501 2019年6月26日 20:37 こんばんは〜。 含蓄のある話でした。 とても勉強になりました〜。	コメントへの返答 2019年6月26日 21:10 このネタはさすがに深く勉強して考えて欲しいと思ってます。国そのものが消滅してしまったらおっぱいネタ満載の『パイセン』も描けなくなります。こんなアホな事やってられる平和を維持するには戦争をする以上の努力が必要なんですよ。
MasaGoto 2019年6月27日 1:22 論理的なが正しいかと思いますが・・・。 ＞まぁ理論的な思考廻路を持たない人間は相手にする價値がありません。 「勉強になります！」が口癖のお方は小室先生の著書で数学的な論理思考を習得されるといいかと思いますね。	コメントへの返答 2019年6月27日 20:02 理論・論理、慣習・習慣、評論・論評……意味が大きく重なるのに部分的に異なる語は結構迷います。英語だとシソーラスが発達してるしODEくらいの普通の辞典でも間違い易い語には注釈があるので手軽に調べられるのですが……日本語の辞書って学問的な解説があまり無いんですよね。母国語である日本語よりも英語の方が微妙な違いを調べて知ってる辺りにある種の矛盾を感じます(^^; >>「勉強になります！」が口癖のお方は さすがに手厳しいですね(^^; こうした問題に関心や知識が無い人にはたとえ理解できるのが1/10しか無くてもメディアやネットが垂れ流す情報を鵜呑みにしないだけの何かを掴んで貰えればと思ってます。その為に書いてる所がありますし。 タチが悪いのが基本的な知識が無いのに大ボラを吹く輩。かなり前に某掲示板で見ましたが○○は犯罪だ、と言ってるので根拠条文を訊いたら正面から答えず意味不明な事を言うだけ。Tb,Rw,Sすら知りません。終いには根拠はニュースだと。根拠条文も無くTb,Rw,Sへの当て嵌めもせずに○○罪だと認定するなんて刑法理論としてあり得ないんですけどね。 最近多いのが政治や事件をブログ等で論評してる割に基礎知識が無い人。人の論説を引用して賛成・反対を表明するのはいいです。でも何故そうなのか、賛成すべき理論的根拠や筆者が触れなかった背景、反対するなら理論的に何が間違ってるのか等を論じなければ単なるコピペと大差ありません。政治や刑事事件等を論評する以上それなりの知識を持ってると思ってやり取りするとあまりの基礎知識の無さにびっくりします。 所謂ネトウヨと呼ばれる人達に多い様ですが理論的整合性よりも感情に走った見解がネット上で多数派を占める事による(投票権を持つ)ノンポリな人への悪影響は憂慮すべきだなぁ、と思います。
MasaGoto 2019年6月28日 10:45 小室氏はロジックの重要性を主張していました。某みんカラで有名な方へのコメントがらみで今回、クルマネタではなかったのですがコメントしました。 ○○は犯罪だのところで、これまた小室氏の本で理解したことなのですが、刑法に「人を殺してはならない」との明文規定はありませんね。 一方、道交法ではああするな、こうしろ！みたいな規定だらけです。 その某掲示板のお方はそのたぐいの違いを理解できてなかったのかなと思います（と無理やりクルマネタに持ち込んだ気がしなくもないですが）。	コメントへの返答 2019年6月28日 19:34 小室氏は数学畑の出身ですからね。物理学が「物理法則は神が創った」と宗教から言われる事はあっても数学だけは神が創ったなどと絶対に言えない純粋に理論の世界なので所謂有識者と呼ばれる人達と比較してもレベルが違いますね。 某掲示板はコンピュータシステムに就いて語る場なのに業務妨害がうんたらと低レベルな罵り合いをしてる所に私が介入したものです。業務妨害罪だと言うなら条文に書かれたTbに該当するかを先づ検討しないといけません。場合によっては「書かれざる」Tbもあります。この場合は「実現可能性」です。そんな基本も知らずに犯罪の成立を語るなよと…小学生かお前らは……。好き放題言わせた後に判例(刑法の教科書なら載ってる)を示したら連投繰り返してスレ落しましたけどね(笑)。 法の基本と言えば小室氏は基本法が刑法か民法かと鋭い所を解説してましたね。為政者が民衆を支配する為にあれこれ命令・禁止をするのが刑法を基本とするもの。近代以前の国家はこれが普通です。対して民衆の自由(権利)を守る事を出発点とするのが民法を基本とするもの。こちらは近代になって生まれて来た概念ですね。日本の現状を見ると国家権力に携わる人達は刑法を基本とする感性の持ち主に見えます。「カネが欲しいから増税する」事を繰り返す辺りに現われてますね。