さらば青春、されど青春 さらば青春、されど青春


私はわざわざお金を出して映画を観に行く事はしないんですが(面倒くさいし)知り合いからチケットを貰ったので観に行ってきました。内容的には幸福の科学の創立者である大川隆法氏の伝記みたいなもんですが映画向けにあれこれと脚色してあると思います、多分(^^;


その辺はともかく時代背景が昭和50年代あたりなので至る所に昭和テイストが満ち溢れてました。映像作品の時代考証が好きな人なら出て来る小物を見るだけで面白いのではないでしょうか。

伊藤博文の千円札とか


ピンクの電話とか


劇中のとはモデルが違いますがニキシー管の電卓とか


今では見た事すら無い人も多いんじゃないかな?

喫茶店の中ではアナログレコードから音楽が流れてましたが詳しい人にはその曲も懐かしいのではないかと。私は何の曲か知りませんが(^^;

大学の中に左翼闘争の看板がある所なんかも時代ですねぇ。今では考えられないでしょうが言論界の主流が共産主義万歳、北朝鮮は地上の楽園だなどと言ってた時代があったんですよね〜。

※写真はイメージです

車に着目してみると主人公の下宿の大家さんが乗ってる車はホンダのN360でした。


こちらは水冷化されたNの後継モデルライフですが今の軽と比べるとこんなに小さいです。今の軽、大き過ぎでしょう。


私には車種が判りませんでしたが人から聞いた所によるとデートの場面に出て来た車は日産のパルサーと言う車種だそうです。これは実際に本人が乗ってたそうでそれと同じ型のをわざわざ撮影のために見つけて来たとか。凝ってますね〜。


こうした小物類を見ると昭和時代を背景にした映像作品って段々作るのが難しくなって来るんじゃないかと思います。劇中では他にも車が登場する場面がありますが時代背景が明確な場合、その時代の車を調達しないといけません。まさか昭和の映画にプリウスなんかが走ってるわけには行きませんから(笑)。そうなると多数の車が走ってる場面なんかそもそも撮影できないわけで表現できない場面が多くなって来るでしょう。

商社マンとしてニューヨークに赴任した場面ではオフィスにあるパソコンは背景が黒いブラウン管の画面に緑の文字が表示されるものでした。

こんなイメージ

ニキシー管の電卓もそうですが撮影の為に現役稼働する機器を調達するのは年々困難になって行くと思います。私の手元にある平成時代のパソコンですら液晶画面がビネガーシンドロームで波打って使えなくなったりしてますから。

主人公が下宿の部屋で本棚から本を出して読み始める場面があるのですが、何と渡部昇一氏の『知的生活の方法』でした。本棚の中にはもう一冊『人間らしさの構造』が入ってました。


大川隆法氏が渡部昇一氏を尊敬してるのは有名な話ですがわざわざその為の場面を作るとは…

どんだけ尊敬してるんですか

大川隆法氏は東大法学部の出身ですが東大法学部と言えば左翼の巣窟。平成の時代に東大法科の人に聞いた話ですが教授の研究室に行くとマルクス全集が並んでる程真っ赤っかだったそうです(笑)。にも関わらず左翼思想に染まらなかったのは間違いなく渡部昇一氏の影響ですね。言論界が左翼一辺倒だった時代に孤軍奮闘に近い形で東京裁判史観等の左翼思想と闘い、少しづつではあるもののそうした思想の牙城を切り崩して行った人ですから。

個人的に特に印象深かったのは商社時代のエピソードです。主人公の先輩がアメリカに赴任する前に早めに退社して英会話学校に通うと言う場面があるのですが、そこで主人公が「○○さんほどの人でも赴任前には英会話学校へ行かないとダメなもんなんですか?」と聴くとそれを聞いた上司の人が主人公に向かって「英会話学校に行かなくていい君は経費が節約できて大いに結構」と。そしてその先輩は上司の前で恥をかかされたと激怒します。

まぁ、アレですね。

アホかお前は

アメリカに支社を持つ商社の社員なら赴任するのが前提ですから英語くらいできて当たり前。
仕事の内容そのものなんだからできない方が悪い。 それを後輩より実力が無い事が暴露されたからと激怒するのは自分の無能さを認めてるのと同じです。


実力が足りないなら勉強しなさい。それを仕事にして給料貰ってるんでしょ?


しかしこの先輩、自分が努力するどころか逆にニューヨークに赴任する事になった主人公に対し、ニューヨーク支社の人間に主人公の事を苛める様に根回しします。

いや〜、日本人って陰湿ですね〜。
昭和の時代に比べれば減ったかもしれませんがそれでも根底に於いて日本社会に根強く残ってますからね、こうした風潮は。自分より能力のある人間を認めたくないのは下衆の証明ですよ(笑)。


ニューヨークのエピソードでは資金調達の方法を巡って議論する場面があります。アメリカ支社のアメリカ人達は日本の本社を無視してアメリカの銀行から調達しようとします。そんなのは事後承諾を取ればいいと。対して主人公はそんな事をしたら一時的利益は得られるかも知れないが後で本社の怒りを買い資金を停められるから危険だと警告します。

この場面で日本人社員は警告する主人公を見て「あちゃ〜、このバカが」と言った態度を見せます。しかしアメリカ人社員達は様々な理由を上げて自分達のやり方で正しいんだと主張します。主人公はそれに対してそれが正しくないと理由を挙げて反論するわけですが……

知ってる人はピンと来ると思います。これはディベート(debate)です。双方共に意見を出し合い、互いに相手の論理矛盾や弱点を指摘し合って最終的にどちらが妥当な見解かを導き出すものです。アメリカでは競技にもなってます。

ディベートを日本に紹介したのは「英語道」で有名な松本道弘氏です。あくまで実用的な英語を追求した氏と学問的研究を追求した渡部昇一氏が対談した本なんか面白いです。氏の努力によって日本でもディベートの手法を取り入れた所があるものの社会全般に普及するまでには至ってません。

因みにこのディベートと言う用語ですが当初はリベート(賄賂)と紛らわしいからと日本語の呼称にならないかとも言われたそうですが松本氏は該当する日本語が無いとあくまで英語の形そのままに拘ったとか。残念な事に氏は漢字語にはあまり詳しくなかった様で。debateに該当すべき訳語は「辯論」です。競技にまでなったアメリカの用法と完全に一致まではしませんが単に意見を述べるだけの「議論」と異なり互いの弱点を指摘し合って結論を導き出すプロセスは同じです。日本語では専ら法律の世界で使われる用語ですが(訴訟に於ける口頭弁論)単語の守備範囲としてdebateの訳語に当てるには妥当でしょう。因みに漢語でもdebateに近い意味で使われます。

それはともかく、妥当な結論を導き出す為に議論をすると言う発想が日本に定着してないのは確かです。そのためには年齢や役職等に関係なく意見を出し合い指摘し合わなければならないのですが社会全体にその風潮が定着しない限り日本はいつまで経ってもアメリカと対等にはなれないですね。

商社時代より前の主人公が就職活動をするエピソードでは協定による会社訪問以前に内定を取るのが常識だとする場面がありました。ここにもタテマエを重視する日本の腐れっぷりが現れてますね。そして主人公のやや派手な青いスーツを指して「そんな服で就職活動をするなんて」と言った場面があります。

有名な学校なので知ってる人も多いと思いますが、アメリカにMITと言う大学があります。そこの先生でクロード・シャノンと言う人がいました。シャノンの情報理論が無ければ計算機だったコンピュータが情報処理機になる事は無かったほどコンピュータの発展に貢献した人物です。


しかしこの御仁、キャンパス内を一輪車で移動する様な変人だったそうです。この人が日本に生まれていたら日本の大学はこんな人物を大学の先生として雇ったでしょうか?東大や京大でこんな変人が先生をしているなんて日本社会の常識からは考えられないでしょう。

曾てコンピュータは一台の大きな機械を何十人もが共同で使うのが当たり前でした。そんな時代に一人につき一台の時代が来ると考えパーソナルコンピュータはどうあるべきかとデザインを考えた人がいます。パーソナルコンピュータの父と呼ばれ尊敬されるアラン・ケイです。この人は軍に在籍していた時に優秀さを見込まれてコンピュータの勉強をしたそうですが元々はジャズのギタリストでした。


奇人・変人大いに結構。肩書や経歴でなくその人がどんな事にチャレンジするかを見るのがアメリカ社会です。日本社会はこうしたアメリカのいい所だけは真似しようとしません。就職活動の面接等にはリクルートスーツを着て行くのが暗黙の了解・常識だとするのが日本社会です。中身よりも体面の方が大事なのです。とにかく従順で規格品の様な人間が欲しいんです。アメリカを舞台にした場面を見てそんな事を考えてしまいました。

え?宗教団体の映画だから宗教の話はどうなのかって?
そう言うのは私の関心外です(笑)。


(03/06/2678)

comments on social media
セラフィム2501
2018/06/03 21:28:34
こんばんは〜。

大川隆法さんの宗教に興味がなく、大川隆法さんの映画を観てこれだけ語れるのは素晴らしい才能です!

そういえば僕も最近映画館に行ってないですね〜。
コメントへの返答
2018/06/03 22:30:35
いやいや、昭和が舞台ですから昭和を知ってる人なら突っ込むネタは満載だと思いますよ。時代考証が好きな人ならココはこうだとか色々指摘できるんじゃないかと。

確かに宗教団体が作った映画ですが宗教的内容がてんこ盛りってわけじゃないですから。主人公が目覚めて宗教家になる点以外は普通のドラマなんで、色々語るのは誰でもできると思います。私が語ってる事って普通の映画・ドラマにあってもおかしくない内容でしょ?(笑)
岡リ
2018/06/04 09:06:04
聖徳太子が一万円札と五千円札両方に使われてた頃は

お釣りの間違いもありましたよね・・・・(^-^ゞ


五百円札も何気に好きでした

青いお札が良かったんですよね(*^^*)
コメントへの返答
2018/06/04 23:51:11
額面が違うのにどちらも聖徳太子ってのは紛らわしかったですね〜。何でそうなったんでしょうね(^^;

五百円札があった頃って一応百円札も使えたわけですが使う人はいなかったですね。今のデザインになる前の百円玉でも結構珍しかったし。