TW200 ヤマハ TW200



この單車を最も印象付けるのは極太のタイヤでせう。フロントで一般のオフ車竝、リアに至っては輕自動車よりも太い物が裝着されてゐます。發賣當初はアドベンチャー・トレールと銘打って山奥まで分け入って行ける走破性を豫感させるものでしたが、實際に自分が所有するのはちょっと……と言ふ印象を與へて了ったのか不人氣車となって了ひました。

實際にオフロードを走っての印象は、とにかく誰でもオフを樂しめる單車ではないか、と言ふものです。當然ですがオフロードは路面が舗裝されてないので簡單に轉倒します。ところがTWは扱ひ易い出力特性、足付きの良い車格、そしてこれぞTWの眞骨頂と主張する極太タイヤのお蔭で初心者でも氣張らずにダートに入って行ける安心感を與へてくれます。

私自身、學部の仲間と富士山を走った事がありますが、あの瓦礫だらけのダートをタイヤを滑らせながら逆ハン切ってコーナーを曲がって行っても一度も轉倒しませんでした。又、タイヤの太さにも拘はらず低い車高のお蔭でアクセルターンも以外と簡單にこなせます。

山の中で一休み。
やはりTWにはこんな風景が似合ひますね。


山に入って行き止まりの所で。
こんな場面でも立ちゴケの不安はありません。


私のTWは純正オプションのキャリアを付けてましたが、これはツーリング時に重寶しました。タイヤの大きさに合はせた爲か他のオフ車の二倍程の面積があるので、キャンプ用具を積むのも樂でした。ソロで、或ひは友人とキャンプツーリングに行った囘數はTWが一番多い氣がします。自分としてはオフロードとキャンプを一番樂しんだ單車と言へるでせう。

キャンプツーリングの途中。
荷物滿載時のTWは頼もしいです。


缺點も色々とあって、先づはタンク容量が7&T21235F;と少ない事。乘車姿勢の都合等から巨大なタンクが不釣り合ひなのは解るのですが、極太タイヤを囘す爲に燃費が比較的惡く(30km/&T21235F;走れば良い方です)航続距離が短い事を考へると「アドベンチャー・トレール」として山奥に分け入って行く事は常にガス缺の恐怖との葛藤でもあります。

又、チェーンのサイズが428なので直ぐに伸びて了ひます。あのタイヤを囘すならせめて520は欲しい所です。

他にもドライブスプロケットを交換する時は必ずオイルを抜かなければならないと言ふのがあります。と言ふのはクランクケース左側カバーとスプロケットのカバーが一體化されてゐる爲、そのカバーを外すと必ずオイルが流れ出して了ふのです。ベースとなったXT125や同系統エンジンであるセローではそんな設計にはなってなかった筈ですが、何故TWだけがこんな事に?

TWと言へば高地補正機能付きのキャブが裝着されてましたが、これにどれだけ意味があったのかは個人的に疑問な所です。と言ふのは標高1,800mの高地、ポテトチップの袋がパンパンに膨れる樣な土地に數ヶ月住んだ事があるのですが、これと言った變化を實感した事がありません。と言ふか2サイクルのKDXですら特にセッティングをする事なく普通に走れてゐた譯でして……(^^; 日本車メーカーの2サイクル技術が優れてゐると言へばそれまでですが、あの機能は標高何メートルから實感出來るのでせうか?

私のTWは最初期型になります。即ち、オフロードを走る爲に設計された「本來の」TWです。一時期流行した、部品を剥ぎ取られたのか或ひは寄せ集めて造ったのか判らない、舗裝路しか走らない意味不明のTWではありません。勿論、自分の單車にどんな改造をしやうが公序良俗に反しなければ個人の自由と考へます。しかしながら、スクラップの如く改造されたTWが個人の自由で許容できる範圍なのか、私としては疑問です。例へば、フェンダーを外せば泥撥ねが運轉者に掛かるのは自己責任の範圍と言へますが、その泥撥ねは周圍の人や車にも掛かるのです。

これは改造の程度が問題と言ふよりその乘り手の人間性の問題と言ふべきでせう。「人氣俳優がドラマの中で乘ってゐたから」と言ふ理由でその車種を選ぶ樣な輕薄な人間は、少なくともTWの發賣當初には存在しませんでした。と言ふよりも、その樣な輩は單車に乘らない時代だったと言った方が正確かも知れません。その意味で單車が一般大衆に浸透して來た證據だと言へるのかも知れませんが、その結果は乘り手の質を低下させただけではないでせうか。少なくとも有名レーサーに憧れてそのレプリカに乘る樣な人間は、その服裝、即ち運轉者自身の身を守る裝備まで眞似する、或ひは眞似しなくとも相應の裝備の必要性を意識するだけの分別はありましたから。

半ヘル、半袖、手袋無しの輕裝でも平氣な人間は傳統的な單車乘りから見れば珍走と同類であり、それは即ち輕蔑の對象でしかありません。バイク雜誌の中でも「夏暑いからと言って半袖Tシャツで單車に乘るのは如何なものか」と輕裝ライダーを窘める投稿がされてゐた雰圍氣は彼らには理解出來ないでせう。

TWの次には通稱「イカ釣り漁船」、所謂バカスクへと流行が移りましたが、さうした輩はそのスタイルで一生單車に乘り續ける意志があるのでせうか? 若し一時的な流行として乘るのであれば最初から乘らないで欲しいと言ふのが率直な意見です。それは若さの特權を勘違ひして散々やり散らかして單車の評判を貶めた擧げ句「ハタチ過ぎたらクルマ」へと乘り代へて行った珍走と同樣、傳統的な單車乘りに取っては迷惑な存在以外の何物でもないのですから。

最近では「本來の」TWを全く見掛けなくなって了ひましたが、それでもwebを探せば未だ未だ現役で乘ってゐる人達が存在する樣で何とも言へない嬉しさを感じます。學部時の友人が「免許を取るから…」と讓って以來TWに乘った事は一度も無いですが、機會があれば再びTWに跨ってオフロードを滿喫したいものです。

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