ばくおん&T21286B;
ばくおん&T21286B;


 少し前に某掲示板でバイク普及の爲にバイクの漫畫やアニメを普及させては…と言ふ話題が語られてゐた。そこで交はされた意見は樣々であり中には誹謗中傷に過ぎないものも散見されたのだが、その期待に應へる傾向の漫畫がプロ作家による作品として現實に登場した。ヤングチャンピオン烈に連載の『ばくおん&T21286B;』。作者はおりもとみまな。


 ……知らん名前だ、と思ったらH系漫畫の作家だった。別にH系だから知らないのでは無く單に最近は漫畫を讀む時間が無いだけである。えのあきらだって『ジャジャ』以前の作品から知ってたし。最初に讀んだのは『オルラ』だっけか(^^;
 作品の賣り文句はありさうで無かった「女子高生×バイク」との事だが……待て待て、女子高生がバイクに乘る漫畫は80年代に既にあったぞ。ちょっと紹介しやう。作品名は敢へて伏すが判る人ゐるかな?




 バイクに乘ってゐるどころかバイク通學の女子高生である。さて彼女の愛車は何か? 原付スクーター? いやいや、とんでもない。



 何とCBR400Fだ。ホンダ公式サイトに寫眞が&T217473;載されてゐるがこんなバイクである。



 女子高生がCBR400Fとはさすが全盛期…と思ひきや、




 何とグレードアップしてるよ(笑)。新しいバイクはCBR400RRである。




 そして戀愛に積極的な彼女は意中の男の子をタンデムに誘ったり、




 同じ男の子を巡って年上の女性と街道レースまでやっちゃいます(笑)。




 仲々樂しい展開だ(^^;
 しかも彼女の友人達も揃ってバイク乘りだったりする(笑)。



 とは言へこの漫畫はバイク乘りの女子高生が登場するだけでありバイク漫畫では無い。なので「女子高生×バイク」を中心に据へた作品としては『ばくおん&T21286B;』が初めてと言って良いであらう。

 『ばくおん&T21286B;』は未だ連載が始まったばかりであり、どんな傾向に進んで行くのかは未知數である。とは言へ&T212D21;主人公が未だ&T212E50;許を持ってをらず取得中。&T212D22;主人公はバイクも持ってをらずこれから入手しなければならない。この二點からライダーとしての成長を描く作品になるのではないかと期待出來る。



 &T212E50;許に付いてであるが、脇役ならともかく主人公が教習所へ通ふ場面がバイク漫畫で描かれるのは珍しいのではないか。バイクを中心に物語が進む以上、&T212E50;許もバイクも持ってゐなければ話にならないからである。私が知ってゐるのはこれ位しか無い。


『ペリカンロード』(五十嵐浩一)



『風を抜け!』(村上もとか)

 これらの作品では&T212E50;許取得後に主人公がライダー(後者はレーサー)として成長する樣が描かれてをり『ばくおん&T21286B;』もその傾向にあると期待出來さうだ。

 次に車輛の所有であるが、これは高校生にとって最大の難關と言へるであらう。80年代であれば50ccクラスから始めても物語として問題は無かったし現實にもその道筋を辿る人は多かった。しかし昨今の50ccクラスは魅力ある車種が絶滅してをり登場人物達が50ccクラスに乘ってゐたのではサマにならない。樣々な規制により骨抜きにされ本物のスポーツ車が絶滅した今どきの50ccクラスには、最高出力7.2ps、最高速度90km/hの性能を誇り上級クラスの自動二輪に引けを取らない走りを見せたスーパーゼロハン時代の魅力は無いのだ。その爲か『ばくおん&T21286B;』でも自動二輪&T212E50;許から入って行くのだが、&T212E50;許に見合ったクラスの車輛となれば價格も相應に高くなって來る。
 まぁバイク所有の金錢的ハードルは80年代でも當然あった譯だが、漫畫の世界では敢へて觸れないのが普通であった。そこをきちんと描くと話として纏まらなくなるからだ。私の知る限り作品を通してその部分を描き續け、それでゐて話をきっちり纏めてある例は『ペリカンロード』だけだ。どんな風に描いてあるか紹介して見やう。



 いきなり挫折を味はふ主人公。
 一方で彼の友人は400ccのバイクを新車購入する。


 カワサキZ400GP。新車當時の價格は¥478,000である。そんな彼を待ち受けるのは……


 こんな現實である(笑)。他の漫畫でも金錢面の苦勞を仄めかす所はあるのだが、ここまであからさまに切り込んだ作品は寡聞にして知らない。しかもかうした場面は作中の至る所に現れるのだ。





 そしてバイト疲れのあまり他のバイト中に爆睡する始末(笑)。



 バイクに必要な費用は車輛代金だけではない。日頃の燃料費や部品代を始めツーリングに行くのだって金は掛かる。バイクに乘る一方で彼等は常にバイトに追はれてゐるのだ。さうした各人の苦勞もキッチリと描かれてゐる。






 『ばくおん&T21286B;』では親のお下がりを貰ふ娘もゐる樣だが、未だバイクを持たない主人公がどの樣に入手するのか? 又、バイクを入手した後はどの樣に維持費を捻出して行くのか?。それらを話として如何に上手く纏めるかは作者の力量に掛かってゐる。

 バイク漫畫と言へば大抵はレース物になるか珍走物になるのが一般的だったが『ばくおん&T21286B;』は女子高生が主役である爲どちらにも行きさうにない。しかも80年代の樣な盛り上がりも無く、嘗ての正統派ライダーから見れば眉を顰めざるを得ない輩がバイク乘りの多くを占める現在に於いて彼女らがどんなライダーに成長して行くのか、そしてバイクの魅力を如何に表現して行くのか、今後の展開が樂しみな作品である。

 とは言ふものの、最後にちょっと一言。『ばくおん&T21286B;』には期待したいが連載してゐる雜誌はだうにかならんものか……。&T217473;載作品の殆どがエロ漫畫であり(いや、そっち系を否定はしないが『ばくおん&T21286B;』の爲だけにこの雜誌買ふのはちょっとねぇ…)、尚且つ雜誌そのものが滅多にお目に掛かれないマイナー誌って……。打ち切りや廃刊の憂き目に遭はず單行本での完結まで漕ぎ着けて欲しいものだ。
(15/05/2671)<>