キャブレターフロートの補修(AR80) キャブレターフロートの補修(AR80)


古い車輛では起こり得る事ですがAR80のキャブフロートに穴が開きました。穴と言っても肉眼では確認できない大きさのものが多數開いてゐたと推測されます。その爲、當初は原因が判らずアイドリング不調→油面異常の線を推測し、分解したフロート單體を數日間放置してガソリンが少しづつ滲み出て來るのを確認できた事から原因を特定しました。

修理としてはフロートが部品として入手可能だったので新品を調達して交換。これでキャブレター不調は解決するのですが別の視點から根本的に問題を解決しないと話になりません。

新品のフロートに交換した所で暫く乘らないとフロートは再度錆びます。ガソリンの液面=空氣とガソリンの境界を中心に緑青が發生し、それがフロート全體、延いてはジェット類の詰まりへと廣がるわけで、そこを解決しないと頻繁に分解掃除をするハメになります。實際、新品に交換したフロートも一カ月程乘らなかったら再度錆びましたし(^^;

元のフロートもこの錆によって見えない穴が多數開いたと考へられます。それを補修するには何らかの方法でフロート表面をコーティングすればいいわけで、その爲に先づ氣温が上がる夏にフロートを直射日光に何日も曝して内部に溜まったガソリンを完全に揮發させました。

フロートの素材は真鍮なので最初は板金半田でのコーティングを考へました。が、難易度はかなり高いです。薄っぺらい真鍮の表面全體(何せ何處が穴なのか見えないので)をフロート自體の重さに影響しない厚みで均一に半田コーティングするのはさすがに自分のスキルでは難しいです。 バーナーでフロートに穴を開けて再起不能にする確率の方が高いです(^^;

ガソリンタンク用のコーティング劑もありますがフロートの爲だけに購入するには量が多過ぎます。そこでふと目に止まったのが工具箱の中に轉がってた二液エポキシ接着劑。これなら塗料の樣に簡單にコーティングできます。

エポキシ樹脂を使ふ事を思ひ付いたのは次の樣な理由によります。

一、丁度手元にあった(笑)。
二、塗料の樣に筆で塗れるので作業が簡單。表面全部を覆ふ事で見えない穴も塞ぐ事が可能。
三、接着劑なので塗っても剥がれない(笑)。
四、金屬と違って輕いが硬化すると非常に硬くなるので強度面の不安はナシ。
五、エポキシ樹脂を溶解させるには專用のエポキシシンナーが必要であり弱溶劑(所謂塗料シンナー。成分的にガソリンと近い。)では溶けない。

反對に以下の樣な不利點もあります。

一、熱に弱い。
二、直射日光に長期間曝すと劣化する。

硬化したエポキシ樹脂はバーナーで炙ると面白いくらいに脆くなります。が、キャブレターのフロート室内部がそんな温度になる事はあり得ません。あったら車輛火災になります(笑)。また、直射日光にしてもフロート室内部は真っ暗になりますからこちらも問題にはなりません。

て事で完全に乾燥させた穴開きフロート表面を二液エポキシ接着劑でコーティングしました。ブツはダイソーで賣ってる物で充分です。

エポキシ樹脂でコーティングしたフロートと加工してないフロート




無色透明なので見分けは付きません。このコーティングしたフロートをキャブに組んだのが秋頃。で、冬の間は乘る機會が減るので春になってフロート及び内部がどんな状態になるかを確認する事にしました。實際、冬の間はツーリングに出る事は無く月に一囘エンジンを掛けた程度です。

で、春になって確認の爲に分解した樣子がこちら。エンジン始動に問題は無かったので豫想できましたがフロート室には錆の徴候すら見當たりません。普通なら一冬放置したら一面緑色になってます。


フロート側


フロート表面にガソリンの着色劑による汚れが少し見られますが緑青の發生は全くありません。また、ガソリンに浸かりっ放しだった事によるエポキシ樹脂の變質もありません。


ジェット類にも緑青の發生は見られず綺麗なもんです。


そんなわけで真鍮フロートの穴補修及び緑青防止にはエポキシ樹脂によるコーティングが有效であると確認できました。特殊な道具や材料が不要で加工も簡單。ちょっと大きな穴でもFRP加工の樣にクロスを貼ってエポキシ樹脂を塗れば再生可能と思はれます。古い車輛で部品缺品により再生が頓挫してる方の參考になれば幸ひです。